中空構造とは

河合隼雄『中空構造日本の深層』(中公文庫)が東京堂書店の文庫コーナー、いちばん目につくところにあったので購入。
二律背反的な正反の対立が統合されて合が生み出される西欧的なあり方とは一線を画し、日本においてはどんな文化の諸相を見ても3項から成り立っていること、しかもその真ん中は”空”であることを指摘する。そして、それゆえに対極にある二つの項は交じり合わずそのままに、延々と”空”のまわりを循環し続けるのが日本の特徴だという。例えば天皇という存在、アメリカからの押し付け憲法と言われながらも日本人に平和憲法として浸透した戦後憲法という存在、などなど。

まずもってこのモデルの論拠となるのは『古事記』などの神話構造。公式を立て、それを現実に応用して解き明かすそのプロセスは数学的にもかかわらず、河合隼雄の文章はきわめて平易でいて理知的で読ませる。
いま読んで壁にぶちあたっていた江藤淳憲法論への懐疑がこんなにも明快に解き明かされたことが何よりの発見。

中空構造日本の深層 (中公文庫)